2013年4月号

恒例の感想文です。


最近PC買いました。色々な調べものをするのにはある程度使えましたが、文章を書くというのに以前購入したTabletでは追いつかなくなりついにHPのノートを買ってしまいました。


Core i 5の贅沢なCPUを搭載しています。そこまでの能力は必要なかったのですが、色々と特権がついて、3年保証を付けても8万ちょっとで済んだのでいい買い物だったと思っています。中古をいろいろ見て回ったのですが、あまり安い感じではなかったので。



それと、ついにヒッグス粒子の存在確定か、というニュースが出ていましたね。このブログでも何度も紹介してきたことですが、ATLASとCMSという異なる設備によるアプローチでも同じ結論に達したようです。これで素粒子学はまた新しい段階へと移るのかと思うとわくわくしますね。


すいません。話がそれました。本題に行きます。




1.闇の中で鮮明に撮影
暗い状態で色彩を判断するのは非常に難しいのは皆さんご存知だと思います。赤外線暗視カメラを用いれば暗闇でも輪郭や明暗をとらえることはできますが、当然色はわかりません。最近NHKでサーモグラフィを用いたカラーの暗視カメラ撮影画像を放送していましたが、これも被写体本来の色彩とは無関係です。



産業技術総合研究所の永宗靖博士らは、暗闇でもカラー動画を撮影できる「赤外線ハイビジョン暗視カメラ」を開発したそうです。被写体で反射した赤外線とわずかに存在する可視光領域の反射光を3このCCDを使って検出し、独自の画像処理技術を施すことでカラー被写体に近い画像が得られたとのことです。



防犯カメラへの応用が期待されているようです。最近防犯カメラの映像が決め手となった事件解決が報じられることが多いような気がします。是非防犯カメラが犯罪「抑止」としての効果を発揮することを願ってやみません。




2.ミドリムシが原料
産業技術総合研究所の芝上基成研究員が発表したのは「微細藻バイオプラスチック」です。これは、驚いたことにミドリムシから抽出した成分を主原料とし、そこに脂肪酸カシューナッツの殻の油脂成分を加えて合成しています。さらに、従来のバイオプラスチックや石油由来のプラスチックと同等の成形性、より優れた耐熱性を有するとのこと。


ミドリムシという動く生命を主原料にするという倫理的な議論は別とすると、面白い材料かもしれません。動く生命に反応してしまうのは私の主観的な感覚です....。




3.新電子デバイス
震災以降、日本では新しいエネルギー源に関する議論が活発に行われていますが、将来的にその議論の机上にあがるかもしれません。

マサチューセッツ工科大学のマ博士らは、水分を吸収すると繰り返し強く反り返るフィルムを開発しました。繰り返し振動は、ピエゾ素子のような圧電素子というもので電気エネルギーに変換できます。開発されたフィルムは水分を含むと膨らむゲル状のフィルムを組み合わせたものだそうです。フィルムは水分濃度によって”そり”変形を制御でき、そのそる力はフィルム自身の重量の380倍に達するそうです。このそり変形が繰り返し起これば、圧電素子で電気エネルギーに変換できる可能性があります。


風力、太陽光といった不安定な発電方法よりずっとポテンシャルがあるような気がします。水が安定してあれば動き続けるわけですからね。問題は耐久性ですかね..。いずれにしても楽しみな発見です。





4.素数の不思議

大学受験の時、整数問題が結構苦手で苦労しました。

その整数問題の中で、私を苦しめたものの一つが素数だったような気がします。そんな素数の思い出しと、身近に利用されている素数について述べていきます。



素数」とは、2以上の整数のうち、1と自分自身でしか割ることができない数です。実はこの素数は整数を並べていったときに「気まぐれに」現れ、そして素数は無限に存在していることが証明されています(この証明はユークリッドの証明と呼ばれています)。



整数のうち1を素数から除外したのは、もし1という整数を評価対象に加えると、どんな整数も1をかけることで表現でき、また1を何回かけても問題なくなってしまいます。このため、1という整数を評価対象に加えた時点で素数は存在しなくなります。数学者たちは議論の末、1を除外するという結論に達したそうです。



その素数ですが、今存在が知られている中で最も大きなものは何でしょうか。2013年1月に史上最大の素数が発見された、2^57885161-1というメルセンヌ数で1700万桁です。2^n-1であらわされるメルセンヌ数はリュカ・テストという手法により素数かどうか判定ができるため、メルセンヌ数を中心に素数かどうかの評価を実施しているそうです。この巨大素数を発見しようというプロジェクトはGIMPSと呼ばれ、以下のサイトで紹介されています。

http://www.mersenne.org/



すでに述べましたが、素数は「気まぐれ」に出現します。この気まぐれに規則性を見出したのがガウスです。正確に素数の規則性を解明したわけでなく、あくまで無限に大きい整数領域での素数の数を示したものになります。この定理は「素数定理」と呼ばれています。素数定理を発見した時、ガウスは15歳。数学の帝王は格が違います.....。


ある数xまでの素数の個数をπ(x)としたとき、ガウスの定理は以下の式であらわされます。


π(x)=x/log e (x)


xが無限大になった時は、この式が正しいということが証明されていますが、10桁程度の数でも6%程度の誤差があります。それでも大まかな予想という意味では画期的と思います。



私はここで2つの疑問がわきました。すべての素数を生み出す素数製造機は存在するのか、それを判定する素数判定器はあるのかということです。Newtonを読み続けると答えは素数製造機はNO、素数判定器はYESであることがわかりました。


素数製造機の候補としてオイラーの二次式X^2-X-41がありますが、Xが40までは素数を生み出し続けるものの、その先は素数でないものも含まれることが証明されています。



素数判定器としてはウィルソンの定理があります。

ある数Pが素数かどうか確かめたいならば、1から(P−1)まですべてをかけて、その数をPで割った時に余りが(P−1)ならばそれは素数である、というものです。百発百中ですが、計算は非常に膨大になるという難点があります。




最後に素数が実際に身近で使用されている例を紹介してこの項を終わりにしたいと思います。クレジットカードでオンライショッピングをしたりすることがあるかと思います。その時に、RSA暗号という単語が出てきているかもしれません。これが素数を用いた暗号化です。

実際はもう少し複雑ですが、概要を説明するとこうなります。まず、クレジットカードで買い物をしようとウェブサイトにアクセスするとサイトからは「11111111111」という大きな数値が送られます。これは公開鍵と呼ばれます。

利用者はクレジットカードの番号を「11111111111」で暗号化してサイトに送り返します。実は、この公開鍵は傍受されるリスクがあります。

しかし、この「11111111111」の公開鍵に隠されたクレジットカードの番号を知るには、その「11111111111」が21649と513239という2つの素数の積によって成り立っている数である、ということを突き止めなくてはいけません。この21649と513239が秘密鍵と呼ばれています。


今の例は「11111111111」という11桁の数値でした。実際のRSA暗号は数百桁にのぼる数を公開鍵として利用します。すなわち約数の素数も百桁を超えます。数百桁の中に隠された約数を探し出すのは極めて難しいでしょう。



このように「巨大な数の約数を発見するのは非常に難しい」ということによりインターネット上での取引の安全性は支えられているのです。身近なところに数学の神秘を感じてしまいますね...。





5.火星の生命を探せ
以前の感想文でも書きましたが、今年は宇宙での動きは楽しみです。今年の大きなイベントの一つは間違いなく火星探査機「キュリオシティ」の探査結果になると思います。



太陽系の惑星で、水が存在できる可能性のある軌道「ハビタブルゾーン」に存在するのは2つしかありません。1つが私たちの住む地球。もう一つは火星です。生命存在の可能性を飛躍的に高めると考えられている要素のうちの一つが「水」の存在です(もちろん、それだけではないのですが)。この点で火星は可能性を秘めた惑星であることがわかります。



今の火星は平均気温が−50℃と極寒です。

しかし、38億年前までは火山活動も盛んで温室効果のある二酸化炭素もあり、温暖な気候であったといわれています。しかしながら、地球よりも星のサイズが小さく、太陽からも遠かったため地球よりも早く冷えてしまったと考えられています。地球は30億年という長い年月をかけて水を保持し続けたのにたいし、火星は数億〜10億年程度しか水を保持できなかったといわれています。


しかし、この感想文でも書いたように、現在でもわずかに液体の水が火星表面に存在している可能性が、2006年にマーズ・グローバル・サーベイヤーによって発見されました。この時の発見はあくまで上空からの観察によるもので、直接水を発見したわけではないのは追記しておきます。しかし、水の痕跡であったとしてもきわめて大きな発見となります。


そして、2004年にも大きな発見がありました。火星周回衛星が火星大気中に「メタン」を発見したのです。メタンは微生物のえさになる重要な物質です。また、メタンは分解されやすいため、メタンが発見されたという事実が、「今も」メタンが作られていることを示唆していることになります。



これらの周回衛星からのデータを基に投入されたのが2012年8月から火星にて活動を開始しているキュリオシティです。キュリオシティは6輪からなる可動探査機です。プルトニウム原子力電池を電源とし、想定可動期間は14年以上(探査予定期間は2年)。


10種類以上の観測装置を搭載し、動く実験室の様相を呈しています。この観測装置のうち主要なものを紹介します。


生命にかかわる有機物の探索を行うのはSAMというガスクロマトグラフィ装置です。スコップのついたロボットアーム(穴をあけるドリルも装着)で火星表面土壌をすくい、SAMの投入口にいれて700〜800℃の高温で加熱した時に発生するガスを分析します。


また、ChemChemという化学分析装置も有しています。これは資料にレーザーを照射し、高温になった資料から発生する光の波長を観測することで元素分析を行うことができます。試料となる岩石から7メートル離れていても観測が可能なため、広範囲の観測に威力を発揮すると期待されています。



キュリオシティの活躍は今年目が離せませんが、そもそも生命発見の条件とは何でしょうか。多くの研究者が生命と納得するための条件は「仕切りがある(例えば細胞膜など)」、「次世代につなぐ遺伝情報をもっている」、「自身を複製できる」、「内部で化学反応を行いエネルギーを得る」の4点です。もちろんこの条件は地球上の生物を考えた場合で、火星から地球とは全く異なる生命が発見された場合はこの限りではないかもしれません。


ただし、現段階では地球と火星は似た歴史を有するため、生命がいたとすると類似したものになるというのが現在の主流の考え方のようです。今年、大発見はあるのでしょうか。




参考URL
キュリオシティの移動ルートを3Dで見ることができる。
http://www.mars.jpl.nasa.gov/explore/curiosity/






6.まぶたの科学
まぶたは医学的には眼瞼(がんけん)と呼びます。眼球にものが接触しそうになったときに眼球を守ったり、光が強すぎた場合に光量を調節したりという役割があります。



そして、角膜で必要とされる水分や酸素、栄養分は涙で供給され、この涙を眼全体にいきわたらせるのもまぶたの重要な役割です。



まぶたを開閉するシステムの主軸を担うのが、上まぶたを動かす眼瞼挙筋(がんけんきょきん)という筋肉です。眼瞼挙筋の先端は腱膜となっており、この腱膜は瞼板(けんばん)という繊維質で軟骨のような板状組織とつながっています。眼瞼挙筋が収縮すると瞼板が上に持ち上がりまぶたが開くことになります。


面白いことに、瞼板につながっているのはこの眼瞼挙筋だけでなく、ミュラー筋という異なる筋肉がつながっていることです。



このミュラー筋は自分の意志では動かせない筋肉で、例えば眠いとミュラー筋が緩むそうです。これによって、眠い時にまぶたが閉まりやすくなるというわけです。



私は奥二重なのですが、一重というのは世界的にも珍しいそうです。二重というのは腱膜が枝分かれし、それが皮膚近くまで達しているとまぶたをあけるときに腱膜の枝分かれした根元にまぶたの皮膚が引き込まれることで生じます。


一重はこの腱膜の枝分かれが無いか、あっても皮膚に達していないため起こることだそうです。また、子供の頃は脂肪が多く成長につれて脂肪が減ることで一重から二重になる人もいるそうです。



最近増えている眼の病気に、「眼瞼下垂」というものがあります。


上まぶたをあけることができなくなる病気です。これはコンタクトレンズの脱着動作を繰り返すことによる腱膜の損傷や腱膜と瞼板の結合が外れてしまうのが原因のようです。コンタクトレンズもほどほどがよさそうです。





今回はこのくらいにしておきます。

来週はNewton 2013年7月号のモニター打ち合わせのため、Newtonの人と会ってきます。これについても乞うご期待!