夏休みの宿題(6月号、7月号)

3か月もあいてしまいました。


ニュートンは欠かさず読んでいるのですが、記録を残そうとするうちに新しいのが来てそれを読み始めるということの繰り返しでこうなってしまいました。国内出張がしばらくなかったのはもちろんですが、奥様が身重でフォローが必要だったこと、産まれると上の2人の面倒をみる必要があること、という優先順位が高いことがあったことが挙げられます。まぁ、完璧にやろうと思って続かなくても仕方ありませんし、子供と触れ合えるのは何よりのしあわせですし。あっという間に離れていきますからね。子供は。後で「ああしとけばよかった」という後悔はしたくありませんね。だから、家庭に関しては精一杯やっています。とても楽しいですよ。



もちろん家庭だけでなく仕事もやっていますよ。上司が辞めてしまって、「玉突き」リーダーに仕立て上げられちゃったわけなので。リーダーの役割は「雑用」とよく言われます。その通りです。そして、「不満のはけ口」でもあります。若手に不満を良く打ち明けられるんですよ。「あの人のあれが気に食わない」、とかいう他人に対しての不満が多いです。私宛ではなく。まぁ、そりゃそうですよね。本人直接は言いにくいですよね。とはいえ以前に面と向かって私に対して、「リーダーになってから、あなたの指示がわかりやすくなりましたよね。」と上から目線でコメントを部下からいただきました。うーむ、その自信と無神経さがうらやましい。「恐縮です」と答えておきましたわ。
いずれにしても「まだ言うほどのことはやってねぇだろ。」と思うのですが、「なるほど。ふむふむ。」と聞いてあげるとそれで満足し、その後がんばってくれます。単純なんですね、わたしの周りに居る若手は。そこが助かります。悪賢い人はもっと扱いにくいのでしょうが。




リーダーの不満ばかり書きましたがいいところもありますよ!自由度は圧倒的に上がりました。出張や業務の進め方、すべてに対して何も言われません。成果は問われますが、それはあまり問題ではないです。当然結果を求めてやっているわけで。そんなの人に課されるものではなく、自分で自分に課すものでしょう。実際リーダーがいなくなってから仕事のスピードは上がり成果も大きく上げつつあります。



前置き長くなりました。そろそろ本題の感想文へ!今回は、6月号と7月号の中から興味のあった記事を。




(1)「地球」だらけの銀河系、第二の地球探索準備
惑星表面に水が存在するためには、恒星から近すぎず、遠すぎない「ハビタブルゾーン」と呼ばれる領域を公転する必要があります。ESO(ヨーロッパ南天天文台)は、地球に似た惑星が銀河系だけでも数百億個も存在する可能性があることを発表したそうです。これは暗くて低温の「赤色矮星」の観測に基づいて推測されたものだそうです。赤色矮星は銀河系の全恒星の約80%(1600億個)を占め、このうち102個を無作為に選んで観測した結果、40%の恒星が地球型惑星を持っていることが明らかになったとのこと。


また、生命体がいるかどうかを判断する調査する方法として恒星に照らされた惑星の反射光を解析する方法が有力とされているそうです。この方法の妥当性を地球照、すなわち地球そのものの反射光を外から調べることを実施してみたところ、大気中の酸素、海表面の海や緑の割合が読み取れたそうです。この観察手法の精度を上げれば、惑星の調査手法として有力になるとのことです。


地球に類似した環境を有する惑星が見つかり、そこに生命体がある可能性は低くはなく、さらに新しい調査方法も構築されつつあるようですね。距離が離れているので他の惑星の生命体と触れ合うことは難しいのかもしれませんが、はるか遠い宇宙にロマンを感じてしまいました。




(2)次の超大陸はどこ?
過去に地球は何度も大陸が集まり、パンゲアゴンドワナ、ロデイニアなどの超大陸を形成していた事があります。現在の大陸も再び集合し次の超大陸「アメイジア」が形成されるというのが有力な説の一つだそうです。これまでのモデルでは太平洋もしくは大西洋に現在の大陸が集まっていくと考えられていました。ところが近年過去の超大陸地磁気を分析し、過去の超大陸の位置を調査することで超大陸の正確な位置を知ることができたそうです。この結果に基づいてモデルを作るとアメイジアは北極圏に形成されるといわれています。


見てみたいですねアメイジア。でもアメイジアができるのは1億年後だそうです。流石に生きていないなぁ。



(3)スカイツリーで雷の観測がスタート
身近な自然現象である雷。でも知られていないことがいっぱいあることはご存知でしょうか。この次の項目で紹介する閃光現象「スプライト」もその一つです。これに関してはのちほど。


雷の電流は非常に複雑で様々な周波数の成分が含まれています。火災や精密機器の故障などの被害を防ぐためには、雷が落ちた時の電流を詳細に観測し、理解することが大切なのだそうです。


そこで自立式電波塔として世界一の高さを誇るスカイツリーを使って雷の観測がスタートしました。一般的に鉄塔と言われる高い金属の塔であっても、一つの鉄塔に雷が落ちるのは数10年に一度くらいしかないこと。そのため観測装置を設置して落ちる雷を測定するというのは至難の業となります。


一方でスカイツリーはその高さゆえに、年に10回くらいは落雷すると予想されています。参考までに東京タワーに落ちるのは年1回くらい。


スカイツリーの先端を囲むように観測装置を設置し、電流の時間変化、周波数、大きさを測定する。この装置によってデータが蓄積されれば、他の建物の雷対策をする際の貴重な参考データになるわけです。今回の測定装置の一番の特徴は、低い周波数も含めて幅広い周波数まで測定できる所にあります。これまで高周波数のいわゆる電磁波による被害に重点が置かれていましたが、家屋の火災につながるのは「周波数が低く、比較的長い時間流れる電流」ということが分かってきており、今回は後者の測定を実施できるところが従来と異なる点だそうです。

さらに、高感度カメラと組み合わせることで雷が空気中をどのように伝わってくるか、ということも調査する予定です。


スカイツリーは色々な科学調査(そのほかには地震対策や自家発電など)の媒体としても応用されているんですね。



(4)宇宙の渚を駆ける謎の閃光―スプライト

前項にて雷観測の話をしましたが、今度も雷関係です。「スプライト」という言葉を聞いたことある方いるでしょうか。炭酸飲料ではありません。

スプライトというのは、高度約10キロメートル付近で高さ50キロメートル以上にもなる巨大な放電現象のことです。雷雲の上空でこのスプライトという放電現象が起こっていることが記録として確認されたのも1989年と比較的最近です。パイロットの証言はもっと以前からあったようですが。なぜこの現象が最近まで確認できなかったかというと、現象が起こるのが非常に短いことがあげられます。スプライトが起こるのは1000分の1秒から100分の1秒です。このためなかなか本現象をとらえることができませんでした。


そもそもどのようなメカニズムで起こるのでしょうか。雷雲上空の大気には紫外線などの影響で生じた負の電気を持った粒子(イオン)がただよっている。それらの粒子は雷が起こる前には雷雲にたまった正の電気ひかれて雷雲近くへ引き寄せられている。このとき落雷によって雷雲にたまっていた正の電気が瞬時に消えると、取り残された負の電気の影響で、雷雲上空の領域に高い電圧がかかる。この高い電圧がスプライト発生のカギだそうです。


スプライトが現れる高度の大気には電子が下層に比べて多くあり、それらの電子は落雷の結果発生した高い電圧により上へ向かって急激に加速される。加速された電子は周囲の大気中の分子と衝突して光を放つ。これが現在考え方の主流であるスプライト発生メカニズムです。


しかしながら、この「準静電場モデル」では説明しきれない現象もわかってきました。スプライトには人参状や柱状など、形状にバリエーションがあり、また落雷から最大0.1秒遅れて発生する現象などがこれにあたります。


これらの現象をより精度よく観察するため、高精度カメラを用いたスプライト撮影にNHKが成功したとのことです。撮影は10000分の1秒の現象を詳細にとらえることができ、その結果以下のようなことが分かりました。


1.スプライトは上下に成長する
初め下に向った光の筋はあるところで上に方向を変え、再び下向きに戻った。
2.スプライトは雷の真上に現れるとは限らない
立体的な発生状態を観察できた結果、雷発生位置から最大50キロも離れたところでスプライトが発生したケースもあった。


これまで述べてきた知見で現在検討されているスプライト発生メカニズムは以下の3説です。
1.雷が発生する時の電磁パルス
2.大気重力波
3.宇宙塵



どれもイオン密度の「むら」が放電現象の原因となる、というのが考えの基本なのだそうです。


現在国際宇宙ステーションに高精度カメラが持ち込まれ、スプライトの観察が続けられています。新しい発見があるのか、注意深く見ていきたいと思います。




(5)電子体温計の仕組み
子供がいる人は良くわかると思いますが、熱を測る時に数分同じ所に体温計を固定するのは至難の業です。最近の電子体温計は大体15秒かからないくらいで体温を計測できます。これは本当にありがたい。ただ、誤差も大きいので何回か測りますが。


この高速測定のキーワードは「予測」です。だいたいこのくらいの温度上昇がみられる場合、このぐらいの体温「だろう」という数値を示しています。要は、安定するまで計測していなくても近似式に当てはめて体温を予想してしまうのです。その的中確率は+/-0.2℃の誤差で95%以上と定義されているそうです。


ちなみに温度計測はサーミスタで行っています。これは温度によって抵抗値が変化することを応用しています。


これとは別に非接触の体温計もあります。これは鼓膜の温度を実測する体温計で、1秒もあれば計測できます。ただし、鼓膜以外の温度を計測するリスクもあるため、「予測式」の方が正確であるといわれています。





(6)素粒子の世界
最近ヒッグス粒子発見か?という記事で騒がれていますが、素粒子の世界は今とてもホットです。宇宙の始まりや自然現象の解明には不可欠な学問ですがわかりにくいですよね。


そもそも素粒子ってなんでしょうか。「それ以上分けられない最小の粒」、これが答えです。身の回りの物質は原子からできています。原子は素粒子?いえ、違います。原子は原子核というさらに小さな粒の周りを電子という小さな粒が回っている構造です。この中で電子は素粒子です。原子核は陽子と中性子という2種類の粒が集まったものです。これらは素粒子でしょうか?じつは陽子も中性子も2種類の「クォーク」という粒が3つ集まったものでした。このクォーク素粒子です。そして自然現象を理解するには素粒子を理解するだけではなく、素粒子どうしにはたらく「力」についても調べました。このようなことを調べる学問を素粒子物理学と言います。


陽子と中性子を構成するクォークが6種類あることを予想して後にその存在が確かめられたことでノーベル賞を受賞したのが小林誠氏、益川敏英氏です。6種のクォークアップクォーク、チャームクォークトップクォークダウンクォーク、ストレンジクォーク、ボトムクォークです。これらの素粒子の発見には陽子や電子に高速の電子をぶつける加速器が活躍しました。


その一方で電子の仲間が存在することを予想したのがヴォルフガング・パウリです。ベータ崩壊を説明するため、ニュートリノという素粒子が存在することを理論的に予想しました。ニュートリノ電荷をもたず、電子よりも圧倒的に軽い素粒子です。ベータ崩壊の前後で「エネルギー保存則」が成立していないことがこれらの素粒子存在予想につながりました。現在ニュートリノを含めた電子の仲間(レプトン)は、電子ニュートリノ、ミューニュートリノ、タウニュートリノ、電子、ミュー電子、タウ粒子の6種類あることが分かっています。


ここでもう一つポイントとなる粒子があります。それは反粒子です。対称性の破れなどでも反物質は知られていますね。反物質反粒子が集まってできたものです。これについては以前にこのブログでも書いたので詳細は割愛しますが、目に見える物質と融合すると膨大なエネルギーを放出して消滅するという事象が発生します。既述したニュートリノクォーク反粒子の存在はポールディラックによって予想され、後にその存在が確認されます。


保管も難しいため、反粒子はあまり身近ではありませんが、医療分野ではガン検査で「PET(ポジトロン断層撮影法)」で陽電子(電子の反粒子)が使用されています。これは、ガン細胞に陽電子反物質放射性物質)を取り込ませ、それが電子と対消滅する時の光を検出器でとらえるというものです。意外と身近に使われているんですね。



ここからは素粒子間に伝わる力について述べます。力の種類とそれを伝える素粒子については次の4つが知られています。電磁気力の光子、弱い力のウィークポソン、強い力のグル―オン、重力の重力子です。



電磁気力の一例は何でしょうか。バットでボールを打つ時にバットからボールに伝わる力。これは立派な電磁力です。なぜなら原子の最外殻にある電子どうしの電磁気力の反発力によるものだからです。これはイメージしやすいですね。



では、強い力とは何でしょうか。強い力は電磁気力の100倍も強力な力です。ここでいう強い力とは固有名詞であることに注意して下さい。強い力は日常生活でほとんど顔を出すことはありません。なぜならこの力が及ぶ距離が1兆分の1ミリメートルという超至近距離しか働かないためです。陽子や中性子の中に居るクォークが外に飛び出さないように働いている引力、それこそが強い力です。光速に近いスピードで飛び交う粒子をつなぎとめるその力がいかに強いかは、少し考えればイメージできるかもしれません。



さらに弱い力とは、電磁気力の1000分の1程度と非常に弱い力になります。この弱い力も固有名詞です。この力はベータ崩壊をする際に顔を出す力になります。これだけでなく、核融合にも関係している力であり、電磁気力と同じくらい身近な力になります。これが無ければ火山活動も、太陽が輝くことも、原子力発電もなくなってしまうわけですから。




重力については、言うまでもなく身近な現象ですね。しかし、重力はほとんどその中身がわかっていないといわれています。そのため、電磁気力と弱い力の理論統一は完成されましたが、未だに強い力との統一はもちろん、重力との理論統一という最終的な理論は前人未到の領域となっています。実は素粒子物理学は一見複雑に見える現象をシンプルに説明できるようにすることを目指す理論ともいえます。



駆け足でこれまでの流れを見てきました。最後に最前線を少しだけ紹介して、今回の感想文を終わろうと思います。



「理論的」には完成されている弱い力と電磁気力の統一。それに必要で存在は確実視されているものの見つかっていなかった、素粒子の質量を生み出す素粒子、それこそ「ヒッグス粒子」です。真空を含めたありとあらゆるところを満たしているといわれるヒッグス粒子素粒子の進行の邪魔をして「進みにくい」状態にすることこそが、質量の根源と考えられています。Newtonが発売された時点では発見されていませんでしたが、2012年7月、ついにCERNヒッグス粒子と確実視される素粒子を発見したと発表しました。これは大きなニュースでしたね。神の粒子の異名をとるヒッグス粒子。そしてこのヒッグス粒子による質量発生の考えは、南部陽一郎博士によって発案されています。


もうひとつ、素粒子物理学で研究がおこなわれているものがダークマターです。これも以前このブログで書いたことがあるので詳細は割愛しますが、現在わかっている素粒子ではダークマターを説明できません。このダークマターを説明するために提唱されているのが超対称性粒子というものです。これは、素粒子のスピンがことなる素粒子を扱う超対称性理論がベースになっており、スピンの異なるパートナーが存在しているという考えに基づいています。


ダークマター候補の素粒子発見!」そんなニュースをみるのも近いかもしれません。





ほぼ1日で、6月号と7月号の中から興味深い記事に関する感想文を書きました。結構大変でした(汗)。何よりちびたちの妨害が…..。子供がいなければもう少しこの手の記事を書くのは早いのかもしれません。とりあえず夏休みも明日まで。夏休みの宿題を終わらせた感じで気持ち良く書き終えられそうです!